無意識に後ずさると、
襟をつかまれて、力ずくで引き寄せられた。

「・・・俺とお前、従兄弟より血が濃いってホント?」

喉が詰まって、息を止める。

「やっぱ知ってんだよな、当たり前か。
親戚連中じゃ、常識なんだろ。」

「・・・っ、そんなの、私に聞かれても・・・っ」

遼平君と亮介は、母親が違う。
遼平君のお父さんと亮介のお母さんが再婚して、シュウ君が生まれた。

そして亮介の父親は、私達の祖父だという話があった。
亮介のお母さんは、もとは祖父の愛人だったのだと。

表立っては誰も口にしない。
けれど、噂としてではなく知られていることだった。


「で?俺はお前とケッコンできないし?
可哀想だから偽装してあげましょうって?」

「そんな、めちゃくちゃな・・・!
遼平君がそんなこと考えるわけっ・・・」

「うるせえよ。
俺はあいつとは違うから、
間違ってようが、くだらなかろうが、
馬鹿なことだってできんだよ」

息を呑んだ刹那、唇をふさがれた。

驚いたのは一瞬で、
我に返って顔をそむけた。

亮介は構わず、頬に唇を滑らせる。

身体を反らして遠ざけたつもりが、
背後には何もなくて、手が空を切る。

その手を亮介に掴まれた。

「や・・・だっ・・・」

思いっきり腕を突っぱって暴れた。

「やだってば・・・っ、亮介・・・っ」

抑え込まれて、床に当たる背中が痛い。

掴まれて開いた襟元に、かかる息が熱い。

あいた手でめちゃくちゃ叩いているのに、
亮介は少しも取り合わない。

一度も、私の目を見ようとしない。


「お前は従兄弟で、遼平は兄貴で、シュウは弟だ」


自分に都合のいい言葉ばかり聞いてるとだまされるよ

琴子ちゃんをお嫁さんにする約束をしたいんだけど

お前 売り飛ばされそうだったんだっけ




「きらい!きらい!大っ嫌い・・・!」

思いつくままとにかく叫んだ。


ふざけるな、とか

いいかげんにしろ、とか

言いたいことはたくさんあったけれど、

声になったのはそれだけだった。