「・・・ところで、今って何時?」
「んー?11時26分53秒」
「へ!?うそ!!」
慌てて亮介の腕時計をのぞきこんで、
ショックを受けて目を見開く。
・・・何時間歩いてんだ。。
「・・・お前、ほんと何やってんの?
さっきからおんなじ所ウロウロ歩いてるし」
固まった私を、亮介が訝しげに見やる。
「・・・散歩?」
「迷子かよ。もうタクシーで帰れよ。
あっちに行けば駅前に出るし。
したらこの道まで戻ってきて、
そっち曲がれって言えばわかるよ。」
早くしないと
タクシーも帰っちゃうぞ。
とか何とか目の前の交差点を指差す亮介を置いて、
私は立ち上がって歩きだす。
「おい!あっちだって。」
「うん、でもこっちに行けば家なんでしょ?」
「は!?歩く気!?」
「だって歩けるし。こうなったらもう何時でも一緒じゃん。」
「一緒じゃねえよ!どういう思考回路だよ!!」
「うるさいなあ。」
なんだかんだ言いながら、
歩き出した私を追って亮介は立ち上がり、
数歩後ろをついてくる。
私は知らん顔で言い返しながら、
心の中で、しめしめと思う。
このままおとなしく、お帰んなさい。
途中で気がついて、
さりげなく亮介の家の方に先に着くよう、道を選んだ。
しめしめ。


