「つぼみ、あんた一体、どうしたのよ。真面目だけが取り柄、みたいな顔のくせに」

「……それ、地味だって言ってるよね。いや、いいんだけど、ちょっと気になることがあって」

「ん?」


授業後、次の授業の準備をしていると、あたしの前の席に回り込んで座った紗英に言われ、あたしはそう、言葉を濁らせた。

紗英が言うように地味なあたしが、諸岡君なんていう、バスケ部のステキ男子とやたらと目が合うなんて、どう考えても自意識過剰だし、きっとあたしの思い違いだと思うのだ。

なかなかな毒舌ぶりとは反対に、話してみな、と可愛らしく小首をかしげる紗英の顔を見ながら、紗英くらい可愛かったら、たぶん自意識過剰でもないんだろうなぁ、なんて思う。


「おーい、つぼみ?」

「……あ、ううん。なんでもない。気になることなんてなかったよ。気にしないで、紗英」


紗英に話してみようかな、と思った気持ちを改め、言うと、紗英は「変な子」と不思議そうに眉をひそめて席を立ち、その背中を目で追ってみると、諸岡君のところへ向かっていった。

諸岡君と同じく、紗英もバスケ部だ。

部活のことでも話しに行ったのだろう。