【短編】大好きだとか、内緒だし。

 
「あたしなら大丈夫だって。放してよ」

「……」


保健室には、幸か不幸か先生はおらず、諸岡君の手を振り払いながら、あたしはそう言う。

もう、何がなんだか訳が分からなかったのだ。

やたらと目が合うと思っていれば、すぐにそらされたり、少し話せるようになって嬉しいと思っていたら、急に避けられはじめたり、かといえば、こうして強引な態度にも出る。

諸岡君のその真意が、あたしにはどうしても分からず、顔の痛みと相まって、涙がこぼれる。

と。


「……ごめん、春田さん」


ジャージの袖で涙をふき、ついでに鼻水もズビーッとすすっていると、諸岡君は、そう言いながらポケットティッシュを差し出してきた。

なんなんだ、諸岡君。


「謝るくらいなら泣かせないでよっ」

「うん、ごめん」

「ごめんばっかり言うなっ」

「……、……うん」

「もう!なんなのよ、諸岡君っ!!」


ティッシュを乱暴に引き抜き、ちーんと鼻をかみ、それを丸めて「うん」とか「ごめん」しか言わない諸岡君に投げつけてやる。

可愛いクマのキャラクターもので、あたしも大好きなキャラクターだけれど、今はそんなの知らない、最後はポケットティッシュごとだ。