あたしはバッグを手にい持ち、ドアの方に向かって歩いていた。


「舞? 何してるんだよ?」

「帰るから。飛行機でも新幹線でも帰れるでしょ?」


ドアノブに手を掛けようとした時。


「──帰さない」


後ろから、慎吾に抱きしめられてしまった。


「キスマークつけたのは、仕返しもあったけど、一番は舞につけたかったからだよ。信じて欲しい」

「……」

「怒らせてごめん。舞が澤村さんに、オレとの関係を疑われればいいとか、最悪な考えだよな」


慎吾はズルイ。

弱々しい声で言うなんて反則。