一歩一歩近づく有澤くんと 一歩一歩後退するあたし。 「言ったよな?これが俺だって」 「い…言ったよ?」 前進と後退が続く中、 とうとうドアに背中が到達してしまった。 や、やばいっ…。 『逃げなくちゃ』 直感でそう思い、逃げようと思った瞬間。 ──ドン! 大きな音をたてられて ギュッと目を瞑った。 …あれ? 痛くない。 瞼をゆっくり開くと 顔の両脇に有澤くんの手があって 昨日みたいに逃げ場を失ってた。