「なんでノック?」




顔色一つ変えないで質問されると、

妙に恥ずかしくなった。




「いや、特に意味は…」



俯いて返事をすると、

小さな溜め息が聞こえてきた。



え、なんで溜め息?




「とりあえず、こっち…」




とりあえず…ね。



些細な一言も逃さないあたしは

きっと、面倒くさいと思われるんだろうな。





科学室に入ると、何年も

使われてないっていうのが一目で分かった。



教材を置いてある本棚はホコリだらけ。



でも不思議なのが、

床や机、椅子なんかは

ほとんど綺麗なままだった。