男はまた前を向いて静かに言った。


「お前なぁ、あんなとこにいて放っておけるわけないだろ。」



あたしはその言葉に眉をよせた。


どうせ人として見捨てられなかっただけだろう。


素直に受け止められないあたしはそんな事を考えながら窓の外をぼーっと眺めていた。




雨水が窓を濡らして視界を歪ませる。


まるであたしの心のようにドロドロだ。




人を信じてはいけない。

これはあたしの中での決まり事のような物だった。

だからきっとこの男も、優しいのは今だけ。

きっと面倒になったらあたしに構わなくなるだろう。