突然の大雨は黒いアスファルトを濡らし、
激しい雨音は周りの音をほとんど遮断した。

身を刺すような雨の中、
まだ暖かい手を握った。


もう触れることができない、暖かい手を。




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「やっば。傘忘れた!!」
「アタシ持ってきてないよ〜!」


突然の大雨。

天気予報では晴れだったはずの今日。
生徒用昇降口の前は傘を持っていない生徒たちで埋めつくされていた。


私は持ってきていた傘をさした。

「あれ?碓井さん、傘持ってきてたの!?」


振り返ると、名前も知らない女の子が立っていた。

私を知っているのだから多分、同じクラスなのだろう。


「…雨に濡れるの、嫌だから。」

そう言って、名前も知らない女の子に背を向けた。