ある町の

ある家の軒下に


“チロちゃん”という子猫が住んでいました



チロちゃんのお母さんはノラではありましたが、町中の雄猫がポ~ッとなるほどの美猫でした

ですがお母さん猫は雄猫を見る目がなく、町のヤンキーのら猫の危険な香りに惹かれてしまいました

そのヤンキー猫が、チロちゃんのお父さんなのです


お母さん猫はチロちゃんが生まれる前は廃工場の跡に住んでいましたが、チロちゃんがお腹にいた時に、あたたかくてご飯の調達もしやすい民家の軒下におうちを引っ越したのです


お父さん猫は、チロちゃんが生まれる前まではお母さん猫のご飯を取ってきたりおなかをペロペロ舐めてあげたり、とてもお母さん猫を大切にしていましたが、チロちゃんが生まれて間もなくすると、チロちゃんばかりかまっているお母さん猫にだんだん腹を立ててきました

元々遊びの大好きなヤンキー猫のお父さんは、次第にお母さん猫に辛くあたるようになり、昼間は遊んでばかりで何もせず、食事の時間だけ帰ってきてはお母さん猫に食事を取りにいかせ、その上暴力までふるうようになってしまったのです…


チロちゃんは大きくなるにつれ、だんだんエスカレートするお父さん猫のお母さん猫に対する態度で、お父さん猫の事が嫌いになってきてしまいました…



チロちゃんがお母さん猫とお散歩をしだした頃から、お母さん猫はチロちゃんにご飯の取り方やお散歩の時に気をつけなければいけない事を教えはじめました


“ご飯を取る時は周りに何かいないか注意するのよ”

“人間は優しくしてくれる人もいるけど、私たちノラネコには厳しいからね”

“人間の子供は、可愛がってもくれるけど、いたずらもされるからね”

“道を横切る時は、自動車という怖いモノがいきなりビュンってくるから気をつけなければいけないのよ”


お母さん猫はチロちゃんに一生懸命教えました




チロちゃんはお母さん猫の言いつけをしっかり守ったので、今日ははじめて一人(一匹)でのお散歩です



チョン チョン チョン


ちいちゃなチロちゃんも、今日は大人になった気分で足取りも軽やかです


さぁ、チロちゃんのお散歩
第一の関門は、公園に抜ける道にある小さな家の玄関先に放し飼いになってる“ボス”という猫イジメの大好きな犬の前を通る事です