それまではチロの後ろから追いかけるように走ってたファンのスピードは急に早くなって、チロは必死について走らなければなりませんでした。



おうちに着くと、今まさにお父さん猫がお母さん猫に前脚を振り下ろさんとして

“なんでめしがないんだー”

と怒鳴っているところでした。


“お母さんっ”


チロの悲痛な叫びが終わるか終わらないか…


“まて、まてーーっ”

ファンは叫ぶと同時に、お父さん猫に

ドーーン

と体当たり



ゴロゴロゴロ


片脚を上げてたお父さん猫は、バランスを崩して吹っ飛びました。


“かわいそうだと思わないのか”


と、ファンは飛びつきました。


日頃からお父さん猫の横暴ぶりをチロから聞かされていたファンは、いくらチロのお父さんといえども手加減はしません。

取っ組み合いはしばし続き決着がつきました。


毅然とした態度で、チロとお母さん猫の前にすっくと立つファン…


フラフラの足取りで逃げ出すお父さん猫…



“二度と戻ってくるなーっ”


ファンは怒鳴ったあとハッとして、ばつが悪そうに

“…すみません…”

とお母さん猫に謝りました。


“いいんですよ…ありがとうございます”

お母さん猫はにっこり微笑んでファンにお礼をいいました。



それからファンは、お母さん猫の傷が癒えるまで、毎日毎日食べ物を運んでくれました。


お父さん猫はその後あらわれません。



いつしか3匹は、一緒に暮らすようになり

チロは幸せな毎日をおくりました



        fin