死神と騎士

「嘘、だろ…」

アルを追いかけてきたロイは息をのんだ。

大群に囲まれて、しかしまだアルは生きている。

八方から繰り出される剣を躱し、隙をついて最小の動作で剣を振るう。

アルは確実に敵の命を刈り取ってゆく。やがて、兵士たちの間にざわめきが広がり始める。

―――――死神だ。「bloody thorn」に違いない。

囁かれる言葉に、ロイは眉をひそめた。bloody thornとは、≪血の茨≫という意味である。

まだ少年なのにそれほどの通り名を冠するアルは、何者なのだろう。

ロイがアルの側に行く頃には、何百といた兵士は物言わぬ骸と成り果てていた。

血の匂いが充満するその中に、アルは独り立っていた。

「アル」

ロイの呼びかけにアルがこちらを振り向く。

その姿に、ロイは息をのんだ。

戦場の風に遊ばれる漆黒の髪。薄く引き結ばれた唇に、強い意思をたたえて燃え盛る紅い、紅い瞳。

その姿を、麗しいとさえ思った。