死神と騎士

あの時ロイが手負いでなければ確実に負けるまではいかなくとも危なかっただろう。

嫌な考えを振り落とし、気を取り直して喋る。

「…お前は、黒薔薇の騎士なんだな。」

そうして、ちょっと意地悪な質問を投げかける。

「じゃあ、三大公家の者になら、依頼を話すのか?」

薔薇章を持つ騎士は、王家と三大公家には絶対の忠誠を誓う。

アルナの家、エレファリア家も三大公家のうちのひとつだ。

「当然だ。…なぜそんなことを聞く?」

訝しげに問われ、ふい、とアルはそっぽをむいた。

静寂が部屋を満たす。それを破ったのは、乱暴に開かれた扉の音だった。

「アル様!!いらっしゃいますかッ!」

女の声がして、街娘達が飛び込んでくる。

「軍が侵攻を開始しました!」

「セルマニア国が!!」

それを聞いた瞬間、アルがバッ、と立ち上がった。

「場所は!?」

「凱旋門です!」

アルが外に出ると、女達が道を開けた。

「男達はもう出ています!」

「お急ぎ下さい!」

叫び声を後に、アルは駆け出した。後ろで、「待て!俺も…!」

というような声がしたが、気にせず走る、走る、走る。