あ、と思った時にはもう遅かった。
気がつけば抵抗する間もなく、ロイに身体を担ぎ上げられていた。
足をきっちり拘束されていて、アルが暴れてもロイの腕は全然緩むことがなかった。
抵抗を諦めて、ロイの肩に身体を預ける。
手に持った紙袋が揺れるのをぼんやりと見つめていると、不意にロイが立ち止まった。
そこは、聖都でも1,2を争う程の大きな大衆酒場だった。
なるほど、確かにこういう所は信憑性には欠けるが、噂話や都市伝説を集めるにはもってこいの場所だ。
アルはいついかなる時でも“仕事”を重んずるロイの姿勢にいっそ感嘆すら覚えた。
ロイは片手で大きな木彫りの扉を押し開け、中へと入った。
途端、強烈なお酒の匂いが漂ってきて、アルは顔をしかめる。
まだ昼間だというのに、そこでは結構な人数が雑然と並べられた椅子に腰掛け、飲み食いをしていた。
目を引く金髪の美麗な剣士とその肩に担がれた黒い長髪の剣士、という此処には相応しくない組み合わせに、酒場の中は静まり返った。
しかし、それも一瞬のことで、直ぐにそこはいつもの騒がしさを取り戻す。
