ハァ、ハァ…。

なんとか街娘達を振り切った私、アルナは、（注：アルというのは男装している時の名前である）街

の端を流れる川のほとりで一息ついていた。ここは切り立った崖の上に存在し、並みの運動神経では
ここまでたどり着くのは不可能であろう。

緊張をとき、どさりと川べりに座り込んだ。

息を整えつつ、川に映った自分の姿を眺める。

そこには、長い黒髪を後ろでくくり、紅い眼をしたいつものアルがいた。

男装しているのは少しでも私を捜すエレファリア家の連中に見つかりにくくするためだ。

それが功を奏したのか、今まで家の追っ手には一度もつかまっていない。