死神と騎士

客の訪れを感じたのか、カウンターに座っていたマントの男が気だるげに立ち上がった。

「いらっしゃい……って、あれ?アルナ嬢。珍しいね、どうしたの?」

「久しいな、ジュール。貴様の方は相変わらずか。」

くしゃくしゃの茶髪にシャツ、色褪せた黒いマント、履き古したジーンズという格好のこの男は、実のアルナの叔父であり、訳あって家出中だったりする。


昔、まだ小さかったアルナに剣を教えてくれたり、一緒に旅に連れて行ってくれたりしたのはジュールだった。

馬鹿のように見えるが、師であるジュールにまだアルは一回も剣で勝ったことがない。

何でも昔は王家に仕える騎士だった……という噂も耳にした事がある。

「で、ジュール。頼んでいたことは?」

それを聞いたジュールはにやりと笑う。

「あぁ、これだ。読んだら燃やせよ。」

ジュールが無造作に放った羊皮紙を掴み、開く。

そこには、現在アルにかかっている追手の情報とエレファリア家の動向が書かれていた。

「気をつけろよ。父上は業を煮やして、手練の黒薔薇の騎士を使ったようだからな。」
本日何度目かわからない溜息をつき、

「それならもう会った。」

ジュールはわざとなのか大げさに驚いてみせた。

「大丈夫なのか?」

ああ、と答えつつライターで羊皮紙に火をつけた。

炎が紙のうえをなめ、できた燃え残りをブーツの底で踏み潰す。

「じゃあな」

「ああ」

いつもどおりの挨拶を交わし、店を出る。大理石の白さが目を焼いた。