死神と騎士


ふわっ。

漆黒に濡れて輝く髪が、蒼い空に翻った。

「アル様~~~っ!!」

黄色い声が春先の路地裏にこだます。

(あ~っ、もう!しつこいなぁっ!)

アル、俺は、ばたばたと石造りの通りをかけぬけた。

後方、目測で10mほど後ろに、女が20人ほど。

きゃいきゃいと騒ぐ女たちは、楽しそうに俺を追ってくる。

いつものことといえば、まあいつものことだ。というか、半分日課になりかけている。

当初の予定では、ひっそり暮らすはずだったのに。何処いったんだ、俺の予定。

―――――――俺には、秘密がある。いや、唐突で悪いんだが。

俺は、男ではない。かと言ってオカマかと言われれば、それは違う。

俺、…いや、私は、とある理由でただ今家出中である。絶賛家出少女、というわけだ。

私の本名は、アルナイーズ・エレファリア、という。長いので全部覚えてもらわなくて結構だ。

エレファリアというのはこの国をまとめる三大公家のうちのひとつで、私はそこの一人娘だ。

まぁ、言うならば貴族のお姫様、というわけである。

小さな頃からちやほやされて育った私は、そういう特別扱いが嫌いだった。

そういうわけで、お姫様なんてやってられるかーっ!と捨て台詞を残し、こっそり持っていた愛剣と共に家出したのが2年前。

現在は剣を頼りに国中を旅し、性別を偽り男剣士として依頼を受けたりしているのだが。

「なんでこんなことにぃぃぃぃぃっ!!」