乙女桜〜誠の武士〜




………まだ出てこないか。


「………おぃ、いい加減出て来い。
長州か?出てこないなら殺す。」


先ほどから少し後ろに二つの気配
がしていたことに気づいていた。
気配からして、只者ではないな。


「………ばれちゃいましたか。」


あの浅葱色…。壬生浪か。

京に入ってから彼らの事は
私の耳にも入っていた。
かかわらない方が何かと良いだろう。


「………何の様だ。」

「…君が例の人斬りだね。
ちょっと屯所まで来てくれる?」

「生憎俺にはお前らに着いて行く
理由は何もない。
正体を明かす気もない。」

「ふーん。でも僕らにはあるんだなぁ
まぁ、君が嫌がっても
連れていくけど…ねっ!」


ダッ!………。

言い終わるか終わらないかで、
男が陽凪に向かってきた。
………ちっ!こいつ、早ぇ。


陽凪も剣術や体術に自信があるが、
男と、女の力の差には勝てない。
よりによってこの男は
私を男だとおもってるのか、
かなり刀に体重を載せてくる。
つまり、一太刀が重すぎる。


………くっ、このままでは負ける。
せめてあの時のように力が使えたら。