聡美がその言葉を発して、みんながざわついて、私は花を見たの。
トリカブトっていう『貴方は私に死を与えた』が花言葉の。
その花を見ていると頭の中がぐるぐると渦巻いてきた。
華の顔とか、みんなの顔とか、みんなの声とか、私の声が。
それで頭の中がこんがらがって。
そしたらね、声が、聞こえた。
華の、声だったの。
華の声は小さいけど、私にははっきりと聞こえたの。
華は、「私が死んだのはみんなのせい」って言ってた。
空耳じゃない。本当に聞こえた。
だから私は、決めたの。
もう、後には引けない。
眩しい日差しが差し込んだ。
朝はやっぱり寒い。
鞄から教科書を取り出して机置く。
そして、筆箱の中身を見、一本のカッターを手にする。
「………」
親指にぐっと力を籠めると、カチッカチッと音をたてて刃が顔を覗かせた。
光に反射して刃先がキラリと光る。
それを睨むように眺めた。
「……大丈夫。華、安心して」
私が、華の代わりに…。
今日は自習である。
チャンスは、今しかない。
周りは真剣に自習に取り組み、私になど目もくれない。
全く、つい2日前にクラスメートが自殺したっていうのに、信じられない。
決意は固めていながらも私は若干の焦り、不安、緊張があった。
心臓はドクドクと跳ね、冷や汗が額に浮く。
筆箱に手を入れたまま身体が硬直してしまう。
手は少しだけ震えていた。
私は、覚悟を決めてそっと目を瞑る。
華……―――。
ガタッと音をたてて立ち上がる。
当然クラスメートの全員の視線が集まる。
「琴音?」
「どうかしたのー?」
「なんだいきなり…」
次々と私に言葉が向けられるが、耳に入らない。
そんなことより、華が一番憎んだ相手は……。
その人物の方を向くと目が合った。
佐々木宇美。
華をイジメに陥れた犯人。
私は宇美を睨みつけた。
宇美は眉をピクリと動かし、訝しげに私を見る。
しばらく睨み合いが続く。
「……大丈夫」
カッターを右手に宇美の元へ。鋭い刃が見えた。
近寄ってくる私を見た宇美は恐怖で固まっている。
今だ!
ブンッ!
カッターを持った右手を振るう。
宇美は紙一重で頭を伏せ、回避した。
切れた宇美の髪の毛がはらはらと舞った。
「きゃああぁ!!…
悲鳴。
ざわつく教室。
宇美は床に腰を抜かしてしゃがみこんでいた。
「……こ、琴音…ッ!」
「……っ!!」
もう一度カッターを振るう。
シュッと音がして今度は宇美の右肩が切れた。
鮮やかに血が流れる。
「…こ、琴音!」
「何してんだよ!!」
周りは声だけを出し、行動をおこすものはいない。
本当に嫌なクラス。
もう一度、大きくカッターを振りかぶる。
「…やぁっ!」
すると今度は宇美が腕を振るってその腕がカッターに当たった。
「!!」