華は、首を縄でくくりつけ、首を、吊っていた。





彼女は頭も手足もだらんと下げ、目を閉じ、宙に浮いていた。


















今日は、たくさん話そうとしたんだよ?

華を笑わせようとしたの。

早起きしたんだよ。


ねえ、華。

なんで私より早く来てたの?




眠るのが、早すぎるんだよ。








「――………っ、は……っ…、……ぁ……は……、………な……」


声がかすれて出ない。

力が抜け、床に膝をつく。

嗚咽のように漏れ出す声。
生暖かいものが目から溢れ出し、止まらない。


華は酷く、疲れきった歪な顔つきで逝った。
初めて会ったときの優しい笑顔はない。

笑顔は、もうない。



華の身体中を食い入るように見渡す。

ところどころ破けたり、汚れがこびりついた制服、髪は乱れ、青白い肌は傷がつき、無惨な痣が身体中にある。


すぐにわかった。



彼女の元気のない理由が、やっとわかった。

















――――――彼女は、イジメられていたんだ。



ねえ、そうなんでしょ?華。














涙が留めなく零れ落ちる。

それでも私は華から目を離さなかった。





嗚咽を漏らしながら、流れる涙を拭うこともなく、ただ、華を見ていた。









「おはよー、あれ?琴音?
今日は早いじゃん。なんでそんなと…………、きゃあっ!!」


他の女子が入ってきて悲鳴をあげた。



それから更に何人かの男女が教室に着き、この状況を目の当たりにした。


みんなざわざわと小さい悲鳴をあげたり、話し出したりと、静かだった部屋に会話が溢れた。











しばらくして、先生が駆けつけた。











教室に、どんよりとした空気が流れる。


ただみんな席について、頬杖をついたりぼーっとしたりしていた。



私は手で顔を覆っていた。





















なんで、なんで死んじゃったのよ、華……。


それは簡単だ。

イジメられたから。
辛かったから、華は自分から自殺したんだ。

なんでこうなっちゃったんだろう。
なんでなの…?

華……………………。










































誰ノせいデ死ンダンダ……??





















だって、待って。
華はイジメで自殺した。

だから、イジメをした人は誰?




クラスの、みんなだ。


そうだ。

イジメてなかったとしても、それを見て見ぬふりをして助けようともしなかった。




みんなが悪いんだ……!










「……!…何よこれ……!!」

急に女子が声をあげた。

我に帰り、まだ涙に濡れた目を向ける。


あれは……、野沢文香だ。
少し前から足を怪我している。


(そういえば、なんで怪我してるんだろう……?)


彼女は一輪の花を持っていた。

青色の、綺麗な花だ。


「……なんで、花が………!?」


「…………、あ、私のところにも入ってる…!」

「俺もだ」

「俺も…」


クラスの全員が次々と引き出しから花を取り出していく。

ハッとして自分の引き出しを探る。


(………ない)



私のところにはない。




見てのところ、私以外の全員が花を手にしていた。




「……これ、まさか…」


「………華?」