辿り着いたのは、半分ほど崩れてしまった玉座。
大広間の先に王さまが座る椅子があった。
その椅子の上には煌々と煌めく白銀に光るティアラが置かれていた。
天井から落ちてくる瓦礫や、地割れを避けながら椅子の前に到着した。
古城はまもなく崩れ去るだろう。
力を求めない私が、力のティアラを手に入れる。
それは何だか馬鹿みたいなことに思えて、笑ってしまった。
「力なんて、誰も要らないよね。」
この幻想の外には、今必死に戦っている人たちがいる。
その人たちを私は救う義務を与えられた。
ディモンドはそれを私に求めたのだから。
手を伸ばし、ティアラに触れた。
ピリッとした痛みのような熱さが全身を駆け巡り、視界は真っ白に染まった。


![A CHEMIST‘S PANIC [短]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.761/img/book/genre9.png)