結局あの声の主は,和葉が言ってた例の巨人クン:中村浩だった。
それがあまりにも意外で面白くて,あたしはいつの間にか浩渡を目で追うようになっていたんだ。

あたしたち01年生が学校の生活に慣れるまでの1ヵ月ほど,毎朝朝の会に生徒会の先輩が3人ずつに分かれ各教室に来てくれていて,ウチのクラスには生徒会長の立石拓哉先輩とその他2人の先輩が来てくれていた。
生徒会長の立石拓哉先輩は小学校が同じで書道教室も同じだった。その上,あたしは男子と遊ぶのが日課だった"やんちゃッ子"だったから拓哉先輩のグル-プの奴らとも遊んでて,拓哉先輩と遊んだこともあった。
だから,そんな拓哉先輩の変わりようには本当にビックリだった。
"ギャップに弱い"とは別なのだろうが,変わりようには驚きに混じりトキメキがわいていた。
その気持ちをあたしは和葉に打ち明けた。
和葉は「きっと恋だよォ」と言って喜んでくれたが,素直に受け止められず,ただただ目が拓哉先輩を追うような日々が続いた。

そして,あたしは時と共に拓哉先輩に恋をしていった…

好きな人なんてずっと居なかった。
初恋は小学04年生で,習い事で一緒だった中学01年生。
"バカじゃん"って思うカモ知れないケド,実は案外いい感じで幼いながらも一緒に帰ったりした。
でも,初恋の彼は夢を追うためにオ-ストラリアへと飛び立ったんだ。
そして,15歳でプロサ-ファ-になった。
大会出たり,新聞に載ったり,テレビに出たり,大忙しみたいだけど,相変わらずの負けず嫌いと気ままな性格で乗り切ってるみたい…!!!
ケドそれ以来だった,恋なんて。
拓哉先輩は,すごくカッコ良くて,憧れでもあって,「好きだな-」ってひたすら思う感じで…
"叶えばいい"
そういうんじゃない。
"何故なんだろう?"ってすごく不思議だけど,恋をしてることがすごく楽しくって楽しくって…
"好きな人なのに,なんで?"って思う気持ちを押しやってた。
消えることなんて,あるわけないのにね…
そしてそれは,あたしが本気の初恋をしてから分かることになる"コタエ"。