けれど、鈴は彼をかすめただけで
少し離れた場所に、小さく音をたてて落ちてしまった。
男は、私の考えを呼んでいたのか
逃げようとした方に手を付かれ、逃げられなくなった。
「逃がさないよ。」
「くっ・・・。」
「いいねぇ、その顔。そそるね~」
私の両腕をとらえ、樹の幹に押さえつける。
そして、身動きできないことをいいことに私の首筋に顔を近づける。
「嫌っ、止めて!」
気持ち悪くて、顔を横に向けた瞬間
生暖かいものが、首筋這っていった。
それが男の舌だと分かるのに、そう時間はかからなくて
なんだか涙が出そうになった。
悲しいとか、辛いとか、怖いというのではなく
ただ、悔しかった。

