口元から流れる、父親の血を手荒く拭うと

スクッと立ち上がった。

その体には、もうどこにも傷はない。




「さぁ、行け。そろそろ儀式の時間だ。」

「あぁ。」




短くそう答えると、白夜を残し螺旋階段を駆け上がる。

白夜の真意なんて、彼の血を通して見えた。

何を思い、何を考え、この数年を生きてきたのか。

そして何故、千景と共にいるのか。

けれどどうしても彼の口からききたかった言葉がある。

冬夜は、数段階段を上ったところで足を止め振り返った。




「なぁ、あんたは・・・母さんを、咲耶を愛していたのか?」

「なんだ今更。俺が愛する女は、生涯1人だけだ。」

「そっか、ならいい。」




それだけ聞くと、足早に螺旋階段を登っていった冬夜も

彼の背中を見送り「変な奴だな」と小さくいう百夜も

2人とも、フッと同じ笑顔を浮かべていた事は本人達しか知らない。