その時の事を思い出し、思わずギリッと歯を噛んだ。

すると、胸の中に抱いていた瑞姫の体が

ビクッと一瞬震え強張ったのが分かった。




「・・・すまない。」

「ううん。私こそゴメンなさい。嫌なことを思い出させてしまって。」




そう言いながらも、ほんの少し声が震えていることに気が付いた。

人の負の感情に敏感な彼女の事だ。

ちょっとした人の動作や表情で察知してしまう。



さっきの俺の動作にも、怒りが含まれていたことを察知し

自分に向けられたかのように感じてしまったのだろう。



俺はギュッと抱きしめていた腕を少し緩め

胸に埋めていた彼女の顔を、そっと覗き込む。




「アイツの話は、これで終わりな。それより、伊蕗さん達の事知りたくないか?」

「お父さん達?」

「そ。伊蕗さんや彩姫さんの事」