周りから恐れられていた親父だったけど
お袋・・・俺の母親、咲耶(さくや)だけには、凄く優しい顔をしていて
甘い父親だった。
咲耶は、色白で小柄な女性。艶のある黒髪に、黒い瞳。
一見地味な女性だけど、笑うとそこに小さな花が咲いたかのような
可憐で夜に似合う可愛い女性だった。
ある日、仕事が早く終わったのか
ふらりと俺たちがいたリビングに顔を出すと
咲耶が座っていたソファに、ドカリと座った。
そして、一息つくと
「やっぱり、お前の隣は落ち着くな。」
そう言って、目を閉じてしまった。
咲耶はクスクス笑いながら、そして嬉しそうに
白夜の大きな手を、愛おしそうに撫でていたのを覚えている。
なのに千景が現れてから、白夜の態度が変わり始めた。
アイツに何を吹き込まれたのかは分からない。
だけど城に帰ってくる日も少なくなり
仕舞いには、誰にも相談せず千景を側近にし
咲耶と俺を城から追い出そうとし始めた。

