「な。」

「うん。」

「ほら、こっちおいで。」




冬夜に促され、私たちが座ったのは

離れの屋根の上。


木々に邪魔されることなく、大空が見える

私達だけの、特等席。




「綺麗・・・」

「あぁ。そうだな。」




そういって彼が、優しい瞳で見ているのは

空ではなく、隣に座る私。


だけど、私は大空に咲く花火に夢中で気が付かなかった。

優しい瞳の中に浮かぶ、哀しみの色に―――――




「瑞姫・・・俺は・・・」

「え?何か言った?」

「俺は・・・帰ろうと思う。」

「・・・帰るって、何処に?」