伊蕗も彩姫も、どうしても出かけなければいけなくなり

乳母に瑞姫を頼んで外出した日。



夕方家に帰ってみると、瑞姫の泣き声が聞こえ

慌てて家に入ると、怯えた顔で部屋の隅に蹲っていた乳母と

部屋の真ん中で泣き喚く瑞姫がいた。



一瞬、泥棒でも入ったのかと思ったが

彩姫が育てて居間に置いていた植木は枯れ

伊蕗が趣味で育てていた金魚も死に、水に浮かんでいたという。



何があったのか、乳母に聞いたところによると

手が滑って、瑞姫に熱湯が掛かってしまい泣き叫ぶと同時に

彼女を中心に風が巻き起こったらしい。



そしてその風が触れた場所から

植木や金魚たちが命を吸い取られたかのように

枯れたり、水面に浮き始めたそうだ。



乳母は逃げ出そうとしたが、怖くて足が竦んでしまい

部屋の隅に隠れるようにして蹲っていたらしい。