「はい、息吸って」
診察室には私の呼吸音だけが響いている
「どうだった…?」
ブラウスのボタンを閉めながら聞いてみる
「まだ油断はできないけど、大丈夫だろ」
「やったー!!!」
そう、今日は退院検査の日なのだ
「退院していいってことでしょ?!」
私の体はふわふわと浮いている
「まあそうだ。でも、通院をサボらないことと、薬をちゃんと飲むこと」
「はぁーい★」
蓮お兄ちゃんは退院の書類を書き始めた
「んじゃ、先出てるね」
診察室を出るためにドアノブに手をかけた
「退院させたくなかったなぁ~」
「えっ…?」
その言葉とともに、蓮お兄ちゃんは後ろから体に手を回してきた
突然すぎて頭が回らない
「お兄…ちゃん?」
吐息がかかる…
くすぐったいっ…
「声だしたら、廊下のお母さんたちにバレちゃうよ…?」
「…へ?」
蓮お兄ちゃんはゆっくりと唇にキスを落とした
甘くて
大人なイケナイ味…
「んぁっ…!」
キスされている間うまく呼吸ができない
「うまく息つぎできないんだ、かわい」
「ちょっ!!」
かわいい?!!!
ずっと唇は熱をもったままで
頭は混乱を飛び越して
停止だ
「やっぱ、祐也には渡さないし」
「ねぇ、それってどういうこ…」
蓮お兄ちゃんは言葉を遮るように診察室のドアを開けた
ほんと、嫌なやつ…
「ネオン?顔赤いけど…どうしたの?」
お母さんが詰め寄ってきた
「なんでもない、大丈夫だよ」
危ない危ない…
まだ顔が火照ってるみたい
「んじゃ、退院おめでとうってことで」
蓮お兄ちゃんは乱暴に私の頭を撫でて、歩いていった
