でもあたしは理解不能な公式ではなく、宮川の手を見ていた。
宮川ってこんなに手綺麗だったんだ。
肘をつき宮川の顔を見上げたら、こんな馬鹿な生徒のために公式を書く真剣な顔。
こんなに近くで宮川を見るなんて初めてで、なんとなく、ただ顔を眺めてた。
「宮ちゃんって、まつ毛長いんだね」
思ったことをただ口にした。
あたしの声に顔を上げた宮川と目が合う。
たった数秒間目が合っただけなのに、時間が止まったような感覚。
宮川の瞳にあたしが映ってる。
何故か目が離せなかった。
「で?」
「…え?」
止まった時間は宮川の一言で終わりを告げ、あたしは間抜けな声を出した。

