「働いてるなら別に、」
『だって一人より二人の方が楽しいじゃん。』
「喧嘩するかもよ。」
『喧嘩‥‥。』
はは、と。どこか私を馬鹿にしたような笑い方を見せる。組んでいた足を戻し、「喧嘩は嫌だな。」と呟いた。
私はどこに座るべきだろうか。
彼の隣は気が引ける。
床に座ってもいいが、それは家主としての威厳が無いように思えて仕方ない。
でもやはり、彼の隣は気が引けるのだ。
『俺は平和主義者だよ。ナオは?』
「それよりソファーに座らないで。」
『なんで?』
「私が座りたいの。」
『ナオ一人くらいなら座れるじゃん。ほら、』
軽く二回‥‥いや、三回。
彼は隣の空いたスペースを叩いた。確かにソファーは二人掛けではあるけども。
二人掛けに男女二人が腰掛けるとは、なんだか少しやらしいじゃないか。
「‥‥やっぱり退いて。」
『あ、今なんかやらしいこと考えた?』
「考えてませんけど!」
『可愛い女子はムキになるもんじゃないよ。』
『大丈夫。取って食ったりしないから。』
「理性はあるよ、これでもね」と微笑み、もう一度「ほら、」と私を促す。
背凭れに右腕を預け、絶妙に可愛らしい上目遣い。前髪がそれをうっすらと隠しているのが残念だ。
「い、威厳が‥‥」
『威厳?なんの?』
「家主の、」
『尊重するよ、家主の威厳。でもソファーは譲らない。』
すとん、と腰を下ろしてしまえば、どうということでもないと知る。ただ少し、距離が近くて困るだけのこと。
