狂奏曲~コンチェルト~


「あの時、買い物から帰ってきて……壊れたような翼の様子が今でも頭の中に浮かぶの」
「……母さん……」

 母さんは肩を震わせながら、言葉を続ける。
 父さんが、そっとその肩を抱いている。

「すぐに、かなめちゃんに何があったかを聞いて……」
「おばさん……」
「私が買い物になんて行かなければ、防げたかもしれないのに……っ」

 泣きながら、母さんが叫んだ。

「私が買い物にさえ行かなければ、翼を守れたのに……」
「陽葉理……」

 俺は、そっと母さんに近づいた。

「母さん」
「翼……」

 改めて間近で見る母さんは、いつの間にかずっと年を取って小さくなったように思えた。

「あれは、母さんのせいじゃない。母さんが家にいても、きっと同じことが起こってた」
「おばさん、あれは私が嘘をついたからいけなかったの。おばさんのせいじゃない」

 かなめも言う。

「ごめん……母さん、俺、母さんまで傷つけてたんだな……」
「翼……」

 俺の言葉に、かなめも俯いた。


 俺達の過去の過ちのせいで、どれだけの人が自分を責めて、傷ついていたんだろうか。
 ほのかも、有紀も、母さんも――みんな、傷ついていた。