狂奏曲~コンチェルト~


「え……?」

 かなめが何と言ったか認識できずに、呆けた声を出した俺に、かなめは笑いかけた。
 悲しそうに眉をひそめて、俺をまっすぐに見ていた。

「私は、あの出来事があっても――つばちゃんを恨んだりしなかった」
「かなめ……?」

 俺を、恨んでいない?
 そんなわけが……

「あれは、私が悪かったの」
「っ」

 かなめの口で紡がれたのは、およそ信じられないような言葉だった。

「つばちゃんに嘘をついた、私のせいだったの!」

 ゆっくりと近づいてくるかなめ。
 俺は、身動き一つ取れなかった。

「つばちゃん、私は、あの出来事がある前も、あってからも……ずっとつばちゃんのことが好き」

 それは、俺の五年間を粉々に打ち砕くような言葉だった。
 にわかには信じがたい、かなめの言葉。

 それでも、俺はかなめの言葉に耳を傾ける。

 だって、それは――俺を、かなめを、過去から解放してくれる真実だったから。