狂奏曲~コンチェルト~



 そして、はっと気づく。
 つばちゃんと呼ぶかなめに。

 昔からそうやって俺を呼ぶのは、かなめだけだった。
 俺のことを忘れていたかなめは、翼と俺のことを呼んでいたのに。

 それなら、かなめは……思い出している?
 それなら、どうして……どうしてここに……?

 混乱する頭が、考えることを許さない。

「どうして……」
「つばちゃん、聞いて」

 立ち上がって、俺に微笑みかけるかなめ。
 その目から、涙が次から次へと流れ出していた。

「っ……」
「つばちゃん、私、全部思い出したんだよ」

 その言葉は、死刑宣告にも似ていた。
 思い出して欲しくなかった。
 俺との、忌まわしい過去。

 俺が、かなめを陵辱した、汚らわしい過去を――。

「だから、聞いて」

 必死な顔で俺を見ているかなめ。

 かなめ、俺はどうすれば償える?
 なんでも言ってくれ。

 俺はお前のためなら何でもできるから。

 だから、次に続いたかなめの言葉は、

「私はずっとつばちゃんのことが好きだった」

 幻聴かと思った。