過去を思い出しつつあるかなめ。
俺は、その彼女を忌まわしい過去から解放するために、かなめの前から姿を消すことを決めた。
苦しい思いをするのは、俺だけで十分だった。
全てを思い出したときに、目の前に憎むべき男がいるなんて、かなめを苦しめるだけだと思った。
最後に、かなめの幸せそうな笑顔をこの目に焼き付けられただけで幸せだった。
ほとんど何も考えられずに、俺はただ歩いていた。
ただ、かなめの前から姿を消すことだけを考えていた。
何も持たずに部屋を出たらしい俺は、交差点を渡りきったときに気づいた。
携帯電話を持っていないことに。
携帯電話についているストラップは、俺とかなめをつないでいる楽しい幸せな時間の思い出だった。
そう思ったとき、身体が勝手に動いていた。
もと来た道を戻ろうと、走り出していた。
信号の色も、近づいている車の気配にも気づくことなく。
そして、俺は事故に遭った。
はっとして、かなめを突き飛ばした俺。
「いった……」
かなめ、俺に触れないでくれ。
俺は、お前に何をするかわからないから。
俺はもう、お前を傷つけたくないんだ。
「つばちゃん……?」
「かな……め……」
涙を目に浮かべて俺を見上げるかなめ。
色のある世界の中で見るかなめは、眩しいほどに美しかった。

