狂奏曲~コンチェルト~


「本当に……翼が良くなってくれてよかった」

 鬱にも似た症状が出ていた俺。
 虚脱感と倦怠感に、俺は母さんともまともに口をきいていなかった気がする。

「……心配かけて、ごめんな?」

 母さんは何も言わず、目を細めて首を横に振った。

「今日は、楽しんできてくれ」
「もちろん」

 母さんは鼻歌を歌いながら、自分の部屋へと入っていった。

 そういえば、今日は呼び鈴が鳴らなかった。
 そんなことを考えながらぼうっとしていると、玄関の開く音がした。

「ただいま」

 父さんだ。
 二人で出かけるということで、早く帰ってきたのだろう。

 父さんがリビングに顔を出した。

「母さんは?」
「鼻歌歌いながら、用意してると思う」

 そう言うと、父さんは照れくさそうに笑った。

「そうか。それなら私も用意しなくてはな」
「楽しんでこいよ」
「いっちょ前の口聞いて」

 父さんはそう言って、ふと俺の顔を見た。