狂奏曲~コンチェルト~






 夢を見た。

 大切にしていたものを、壊してしまった夢。
 それが何かはわからなかったが、酷く自分を責めていた。

 俺は暗闇の中で、何も見えない暗闇の中で蹲っていた。

 目も見えない。
 耳も聞こえない。

 心を閉ざして、何も感じない。

 だけど、誰かが俺を呼んでいる気がする。

 俺を必死に呼んでいて――……



「翼?」

 呼びかける声に目が覚めた。

「寝てたの? ごめんなさい、起こしたかしら」

 母さんが俺の顔を見た。
 寝ぼけた頭で起き上がると、どうやらリビングのソファで眠っていたらしい。

「いや、こんなとこで寝てた俺が悪いから」

 時計を見れば、午後の五時だった。

「今晩、お父さんと出かけてくるわ。一人でも大丈夫?」

 母さんの言葉に苦笑する。

「いったいいくつだと思ってるんだよ」
「あら、私にしてみたら子供はいつまでたっても子供よ」

 そう言って母さんは、俺の髪に触れた。