狂奏曲~コンチェルト~






 久しぶりに帰ってきた実家は、二年前となんら変わりなかった。
 五年ぶりに認識できるようになった色は、俺の目にはどこか眩しかった。

「母さん?」

 玄関から戻ってきた母さんと鉢合わせをした。

「誰か来てたのか? 言い争うような声が聞こえたけど……」

 母さんは笑顔で首を横に振った。

「なんでもないのよ。ただの押し売り」
「へぇ」

 こうやって平穏な日々を過ごしていると、ときどき違和感を覚える。
 なんで、俺は色覚障害を引き起こしていたのか。
 少し長くなった髪を、鏡で見るたび首をかしげる。
 どうして白髪が生えていたのか。
 俺は、何かに酷く悩んでいたはずなのに、俺はそれがなぜだかよくわからなかった。

 母さんが言うには、受験のストレスだったらしい。
 そう言われればそうだったかもしれない。

 療養のためと大学に休学届けを出し、実家に帰ってきた俺だけれども、事故後はさすがに身体のあちこちが痛んでいたが、二ヶ月たった今では大分快復していた。