狂奏曲~コンチェルト~




 涙が止まらなかった。
 胸が痛くて、苦しくてたまらない。
 誤解を解こうと思っていたのに。
 つばちゃんは私の言葉を聞いてくれると思っていたのに。

 つばちゃんには、私が見えなかった。

 一緒に過ごした幼馴染み。
 その記憶も、つばちゃんの中では違うものに書き換えられているみたいだった。

 罰があたったんだ。

 つばちゃんのことを忘れていた私。
 今度は、つばちゃんが私のことを忘れてしまった。

 枕が涙で濡れている。
 それが乾く暇もなく新たな涙があふれ出てくる。

 どうして、こんなふうになったの?
 ただ、過去の過ちを、正したかっただけなのに……。

 ねえ、神様、どうして私に償うチャンスもくれないの?
 どうして、つばちゃんは私を見てくれないの?

「かな……?」

 お兄ちゃんが部屋の外から、心配そうな声を出す。

「翼、精密検査終わって、異常がないから退院するって」
「…………」
「今まで出てた障害も、なくなったみたいだ……」

 私を忘れて、つばちゃんは解放された。

『忘れた方がいいのかもしれない。貴女も、私も』

 ほのかの言葉が、脳裏に浮かんだ。
 私が、つばちゃんを諦める……?

 でも、つばちゃんは私がつばちゃんを忘れてしまっても、五年も想い続けてくれていた。
 酷い仕打ちをした私のことを、ずっと好きでいてくれた。

 それなのにどうして私がつばちゃんのことを忘れることができる?
 そんなの、できっこない。

 つばちゃんのことを忘れるなんて、今までの五年間で十分だ。