狂奏曲~コンチェルト~


「有紀君!」
「お兄ちゃん……っ」
「お前何言ってるんだよ! かな、お前の目の前に……」

 それでもつばちゃんは、困惑気味に、

「お前こそ何言ってるんだ……? この部屋に、かなめちゃんがいるみたいな言い方して……ここにいるのは、母さんとお前だけじゃないか」
「っ!」
「つばちゃんっ」

 私は大声で呼びかけた。
 それなのに、私の大好きな灰色の瞳には、私は映ってはくれなかった。

「っ……!」

 私は、病室を飛び出した。
 涙が、止まらなかった。

「かなっ!」

 お兄ちゃんが呼ぶ声がしたけど、私を追って病室から出てきたのは、おばさんだった。

「……」
「わかった?」

 睨み付けるような、おばさんの目。

「翼、貴女の事が見えていないみたい」
「……っ」

 言わないで。

「翼は実家に連れて帰るわ」
「それはっ……」

 冷たい瞳が、私を貫いた。

「二度と、翼の前に現れないで」