「あたし、翼のこと好きだったのに、一度も翼を幸せな気分にさせてあげたことないんだよ」
「…………」
「あたしができたのは、翼を嫌な気分にさせることだけだった」

 ほのかは、吹っ切れたような笑顔で、

「ごめんね、かなめ。あたしがいなかったら、あたしにやきもちなんかしなかったよね?」

 え……?

「あたしが翼に近づかなかったら、かなめは羨ましいなんて思わなかったよね?」

 ほのか……?

「よく考えたら、全部……あたしが原因だったんだよ。あたしが、貴女と翼を傷つけた」
「っ……違う!」

 私は今にも消えていなくなりそうなほのかの手を掴んだ。

「ほのかのせいじゃない!ほのかは……ただつばちゃんが好きだっただけでしょ……?」

 私の言葉に、ほのかの目にみるみる涙がたまっていく。

「辛かったんでしょ……?好きな人に振り向いてもらえなくて。憎かったんでしょ、私が。私のせいで、つばちゃんはほのかを見てはくれなかったから……」


 五年間、ほのかはつばちゃんのそばにいた。
 一度も自分を見てはくれない男を想い続けてきたほのか。
 何度、傷ついたんだろう。
 何度、諦めようとしたんだろう。
 でもそれでも、つばちゃんが好きだったほのか。