狂奏曲~コンチェルト~


「翼がもう、何もかもを捨てたとしたら、かなめが出る幕なんてない」

 否定したくても、言葉が思い浮かばなかった。

「でも、もしも翼がまだ悩んでるのなら、かなめがそれを解放する責任があるでしょ?」
「ほのか……?」

 ほのかを見ると、彼女は顔を歪めて、

「ごめんね、意地悪なこと言って。でも、これが最後だから」
「え?」
「出る幕が最初からなかったのは、あたしだから」

 私は驚いて歩む足を止めた。
 それにあわせて、ほのかも止まる。
 向き合ってお互いを見つめた。

「あたし、翼のこと諦める」
「ほのか……」

 ほのかは泣きそうな顔で、

「ずっと好きだった。正直、今でも好き。でも、諦める」

 ほのかは、そう言いきった。

「あたし、翼を追い込んだ」
「でも、それは……っ」

 私が現れたことで、ほのかを追い詰めたせいだったのに。
 ほのかは、ただつばちゃんのことが好きだっただけなのに。