狂奏曲~コンチェルト~


「あた、あたしには無理だった。五年も一緒にいたのに……翼は一度もあたしを見てはくれなかった……」

 ほのかは泣きながら、

「あたし、結局翼を傷つけることしかできなかった!」
「ほのかちゃん、どういうこと?」
「ほのかっ」

 言わなくて良い、そんなことは――……

「翼を追い込んだのは、あたしの言葉だったから!」
「ほのか!」

 私は泣き崩れたほのかを抱きしめた。
 おばさんは呆然と私達二人を見ている。

「……おばさん、私、つばちゃんに謝りたいんです」
「え……?」

 私は唇をかみ締めて、

「つばちゃん、私が記憶を取り戻したら、私がつばちゃんを恨むって、責めるって思い込んで……でも、全部を思い出した私がつばちゃんと話をする前に、この事故に遭って……」
「…………」

 私は深呼吸をして、

「私に償わせてください。つばちゃんを傷つけたことを」

 頭を下げた。

「かなめちゃん……」
「はい」
「……最後にして」
「え?」

 おばさんは、顔をしかめながら、

「もしも、意識を取り戻した翼が、貴女を拒絶したら、貴女といることで翼が傷つくのなら、もう二度と翼には会わないで」

 おばさんは、最終宣告だとでも言うように言い放った。
 私にはその言葉を、

「……わかりました」

 受け入れるしかできなかった。