狂奏曲~コンチェルト~


「また貴女が翼を傷つけたの!?」
「きゃっ」
「おばさま!」

 突然掴みかかられ、私はバランスを崩した。ほのかが慌てておばさんを抑え込んだ。

「おばさま、落ち着いて!」
「ほのかちゃん、放してっ! 翼は、この子のために……!」

 力が抜けてへたり込んだ私を、おばさんは睨みつける。
 泣きながら恨みをぶつけるおばさんの迫力に、私は動けなくなってしまった。

「わ、私……」

 この事故は、きっと私のせいだ。
 私はつばちゃんを傷つけた。

「貴女、どれだけ翼を苦しめたら気が済むの!」

 だけど、自分でわかっているのと、人から言われるのとでは――衝撃の大きさは天と地ほどの差があった。

「貴女の思い出がたくさんあるから、実家から離れて遠くの大学に行くことを許したのに……っ」

 私が覚えていたおばさんは、笑顔が素敵な面白い人で、いつも私を娘のように可愛がってくれていた。

「おばさまっ、かなめに近づいたのは翼で……翼はずっとかなめのことが好きで!」
「好きとかそういう問題じゃないでしょう! ほのかちゃんっ、貴女も翼がこの女のせいで、どれだけ苦しんでいたか知っているでしょう!」

 そのおばさんが、私をこんなにも憎むくらい――つばちゃんは、私の知らないところで苦しんでいた。

「でも……苦しんでいる翼を救えるのは、かなめだけで……」
「ほのかちゃん……」

 泣き出したほのかを、おばさんが驚いたように見る。