狂奏曲~コンチェルト~




 自分のことばかりだった私は、つばちゃんのことをちっとも考えていなかった。
 私は確かにつばちゃんに傷つけられてはいないけれど、私は酷くつばちゃんを傷つけていたということを――。
 つばちゃんを解放してあげたい、そして二人で幸せになりたいと願っていた私は、愚かだった。



 翌日、授業のあとまっすぐに病院に向かう。
 つばちゃんは意識が戻らないものの、一刻を争う状態からは脱したということで個室に移されていた。

 目を覚まさないつばちゃんの手を握って、私は必死に呼びかけていた。

「つばちゃん……起きて……」

 綺麗に剃られてしまった頭にも、包帯が巻かれている。
 看護師さんが、頭を強く打ったと教えてくれた。頭蓋骨の中に溜まってしまった血を取り出す手術をしたらしい。
 全身打撲に、左足の骨折――脳と内臓に損傷がなかったのが奇跡のような状態だったらしい。
 ただ、他の部位への影響は、つばちゃんの意識が戻ってからじゃないとわからない。

「つばちゃん……」

 私にできるのは、ただ祈るだけ。
 最愛の人に呼びかけて、回復することを祈るだけだった。


 目を閉じて、静かに呼吸をしているつばちゃんは、妙に安らかな顔をしていた。