「私も、つばちゃんを愛してる……」
もしも、もしも私達が素直になっていたら。
お互い、好き同士だってことに気づけていたら。
あんなことにはならなかったのに。
「つばちゃんが……好きなの……」
もう、迷いたくない。
素直に気持ちを伝えたい。
「お願い……わかって……」
お兄ちゃんが、私の涙をぬぐう。
「父さん、わかってやってくれ。翼も、かなも……不器用だっただけなんだ。子供で、素直じゃなくて……道を間違えただけなんだ」
お兄ちゃんが、静かな声でお父さんに告げる。
「もしも子供が道を間違えたら、直してあげれば良いだろ? 俺は、二人をあるべき関係に直してやりたい。間違って、お互い……自分を責めて……こんなの、翼もかなも可哀想だ」
お父さんは、じっとお兄ちゃんを見ていた。
そして、そっと私に近づいてきた。
「かなめ……」
ぎゅっと抱きしめられたときは、お父さんがお母さんごと私を抱きしめたんだと気づくのに少しだけ時間がかかった。
「お前は、傷ついていないんだな……?」
私は頷いて、
「私は、つばちゃんに傷つけられたことなんて、一度もない」
そう、断言した。

