狂奏曲~コンチェルト~


「あの……あたしがこんなことを言うのはおかしいかもしれないけど……そんなに思い悩まないで……」
「……冴島さん……」

 冴島さんがためらった後で、そっと私の手に触れた。

「……」
「あたし、ずっと貴女になりたいって思ってた……」
「……冴島さん……」

 私は、冴島さんの手を握り返した。

「いくらあたしが翼に近づいても、翼の心はずっと遠いところにあったの……貴女のところに」

 つばちゃん……

「でも、貴女に叩かれて目が覚めた」

 そうやって気丈に笑う冴島さんが、とても綺麗に見えた。

「あたしじゃ、貴女には敵わない」
「……私も」

 私は冴島さんに笑いかけた。

「冴島さんに叩かれたのが、過去を思い出すきっかけになったんだよ」
「あのときは……ごめんなさい」
「もういいよ」

 俯いてしまう冴島さんに、私はあわてて言う。

「つばちゃんが、早く良くなるように、祈ろう」
「……うん」

 冴島さんは、ただつばちゃんのことが好きだっただけ。
 ずっとずっと、叶わない思いだと知りながらも、それでもかすかな希望にかけてそばにいた人。
 そんな彼女は、私なんかよりずっと強くて、綺麗に思えた。