「ただいま」
家に帰ると、お母さんが心配そうな顔で迎えた。
「かなちゃん、いったいどうしたの?」
「お母さん……私、全部思い出したの」
私の言葉に、はっとお母さんが息を呑んだ。
「か、かなちゃん……っ、大丈夫なの……?」
真っ青な顔で尋ねるお母さんを安心させるように、私は笑顔で頷いた。
「大丈夫」
「それなら良いんだけど……」
「かな、早く連絡してやれ」
お兄ちゃんが私を急かした。
「連絡?」
お母さんが不思議そうな顔をした。
お兄ちゃんは、申し訳なさそうな顔をして、
「言ってなかったけど、翼、同じ大学にいるんだ」
その言葉に、お母さんの顔色が変わった。
「翼ちゃんが?」
「ああ」
お母さんは言いにくそうに、
「それじゃあ、かなちゃんには……その……」
「会ったよ」
「……有ちゃんは、それを……」
「母さん」
お兄ちゃんは有無を言わさぬ声で、
「これはかなと翼の問題だから」
「…………」
それ以上、お母さんは何も言わなかった。
私はそのまま自分の部屋に入って、携帯を操作した。

