狂奏曲~コンチェルト~


「こんなところに、いたのか」
「お兄ちゃん……」

 二人して、俯いて何も言わないから、沈黙が訪れる。

「……ちょっと、話さないか?」

 その気まずい沈黙を破ったのは、お兄ちゃんだった。
 私は頷いて、再びベンチに腰を下ろした。
 お兄ちゃんも隣に座る。

「かな、思い出したのか……?」

 お兄ちゃんの問いに、私は頷いた。

「そうか……」
「お兄ちゃん」

 私は、まっすぐとお兄ちゃんの顔を見た。
 こんなときに、逃げてなんかいられない。

「お兄ちゃんは、全部知ってるの……?」

 私達、二人に何が起こったのか。

 お兄ちゃんはじっと私の顔を見ていた。
 そして、小さく頷いた。

「翼は、全部俺に話してた」
「……つばちゃんが、私を抱いたことも」

 今までずっと強姦だって言われてきた。
 でも、私はあれをレイプだったなんて思いたくない。

「ああ」

 お兄ちゃんの肯定の言葉に、一気に脱力する。

「私、つばちゃんに嘘をついたの」

 私の告白を、お兄ちゃんは黙って聞いてくれるようだった。
 口に出したら、何かがこみ上げてきて、新しい涙があふれてしまう。