ふらつきながら、かなめは俺の部屋から姿を消した。

 真っ黒になった感情は、真っ黒な視界のまま、俺の中にとどまった。
 黒い意識の中で、漠然とした罪の意識だけが俺を支配する。

 俺は、かなめにいったい何をした?
 最愛の人に、何をした?

 ごめん、かなめ。
 本当に、ごめん。

 謝っても、謝っても、罪は消えない。
 涙を流しながら、うつろに開かれていたかなめの目が、脳裏から離れない。

 世界はいきなり色をなくして、俺は灰色の視界の中にいた。

―― 私、つばちゃんの目、好きだな。知ってる? ときどく青く光るんだよ。

 なぜか、かなめの笑顔とその言葉を思い出した。
 視線を横に動かすと、確かに残る、陵辱の痕跡。

 黒い感情が、とうとう自分に牙を向いた。

「ああああああああああああああああああっ」

 泣き叫びながら、俺はシャーペンを握った。

―― つばちゃんの目は、やっぱり綺麗だな。

「翼っ!」

 俺は、シャーペンを握った腕を振り上げた。
 自分の目に突き立てる前に、間一髪で止めたのは、有紀の腕だった。